下の子が「お兄ちゃんだけ休めてずるい」と言った。その一言に、どう答えればいいか分からなくなる。
先に結論を書きます。
学校の現場で、きょうだいにこう言われたとき、私たちが使う説明は 「戦うものが違う」 です。
そして、もうひとつ正直に書いておきます。きょうだいに影響が出るかどうかは、一概には言えません。
普通に学校へ行き続ける子もいれば、影響を受ける子もいます。
「必ず連鎖する」わけでも、「絶対にしない」わけでもありません。
この記事では、現役教員として見てきたことをそのまま書きます。きれいごとも、脅しも入れません。
※できることは 学校に行きたくないときの対処法 にまとめてあります。
きょうだいの「ずるい」の正体
「ずるい」と言われると、親はまず公平さの話だと受け取ります。同じように育てているのに、と。
でも、この言葉の下にあるのはたいてい別のものです。
| 言っている言葉 | その下にあるもの |
|---|---|
| ずるい/なんで休めるの | 自分も限界が近いというサイン |
| お兄ちゃんばっかり | 自分を見てほしい |
| 私も休んでいい? | 本当に休みたい(試している) |
| 別に、何でもない | 気を遣って言わないと決めた |
最後の行が、いちばん見落とされます。
親の代わりに気を遣うきょうだいは、実際にいます。
文句を言わない子ほど、家の中で役割を背負っていることがあります。
「ずるい」と言ってくれる子は、まだ言えている子です。何も言わなくなった子のほうを、私は気にします。
教員が使う「戦うものが違う」
では、実際にどう答えるか。
私が使うのは、こういう言い方です。
「その子によって課題も、乗り越える順番も違うんだよ」
「あなたにはあなたの課題があって、それは人と比べるものじゃない」
休んでいる子が楽をしているわけではない、と説明しても、たいてい伝わりません。
見た目には家にいるだけだからです。
だから「楽か、楽じゃないか」の土俵から降ります。そもそも 戦っている相手が違う という話にします。
ひとつ条件があります。この説明は、言葉が分かる年齢でないと届きません。
小さい子には、理屈より「あなたのことも見ているよ」を行動で示すほうが早いこともあります。
やってしまいがちな答え方
- 「お兄ちゃんは病気なんだから我慢して」→ 我慢の押しつけになる
- 「あなたは学校に行けてえらいね」→ 行けなくなったら価値がなくなる、と聞こえる
- 「そんなこと言わないの」→ 次から言わなくなるだけ
三番目がいちばん多いです。そして、いちばん静かに効いてしまいます。
きょうだいにも連鎖しますか?
よく聞かれます。正直に答えます。
下の子が行きしぶることは、あります。これは実際に起きています。
ただし、それは「不登校がうつる」からではありません。
同じ家で暮らしていれば、学校のしんどさの話も、家の空気も、同じだけ浴びています。
もともと本人が抱えていたものが、「休んでもいいらしい」と分かった瞬間に表に出てくる。
そういう順番のことが多いです。
後から出てきたほうが、実は前から限界だった。そういうケースを何度も見ています。
なので、連鎖を防ぐという考え方はあまりおすすめしません。
止めようとすると、下の子は「言ってはいけない」と学習してしまいます。
令和6年度の調査では、小中学生の不登校は 353,970人 で過去最多でした。
12年連続で増えています。特別な家庭で起きていることではありません。
どこまで説明するかの判断材料
きょうだいに、どこまで話すべきか。
一律の正解はありません。見ているのはこの3つです。
| 見るところ | 説明を厚くする | 薄くていい |
|---|---|---|
| きょうだいの仲 | もともと仲がいい | 距離がある |
| 家族の情報共有 | 普段から話す家 | 各自が別々の家 |
| 心配しているか | 様子を気にしている | 特に気にしていない |
3つとも右側なら、無理に説明しなくていいと思っています。
特に心配していないなら、特に話さなくていい。その子には、その子の人生があります。
きょうだいを「支える側」に組み込まないでください。
説明は、支援者にするためではなく、不安にさせないためにするものです。
同じ学校にきょうだいがいるとき
同じ学校に在籍している場合、学校側は「特別な配慮」というより 情報の共有 をします。
担任どうしで状況を伝え合う、という程度のことです。きょうだいが特別扱いされるわけではありません。
それより現実的に効くのは、周りからの質問です。
「お兄ちゃん、最近来てないよね」と聞かれる。毎日それに答えるのは、けっこう消耗します。
だから、答え方を決めておく のが有効です。
「ちょっと休んでる」で終わらせていい。説明する義務はない。そう親から言っておきます。
聞かれること自体は止められません。でも、答えを用意しておくだけで、だいぶ楽になります。
不登校の家の空気は環境で変わる
ここまで、きょうだいへの声のかけ方を書いてきました。
ただ、言い方だけで解決するかというと、そうではありません。
「ずるい」が出てくるのは、休んでいる子の状態が止まって見えているときです。
本人が次の場所に向かって動き出すと、この言葉は自然に減っていきます。
きょうだいから見て、止まっていないことが分かる からです。
学校に戻ることだけが動き出しではありません。
在籍を変えて、通信制高校のような別の形で続ける道もあります。
実際に、教室が合わなかった子が登校の形を変えてから落ち着いた例を、私は何度も見ています。
資料を取り寄せて、家族で一度見てみる。それだけでも「先の話ができる家」に変わります。
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その前に、どんな学校なのかを知っておきたい人は N高等学校ってどんな学校? をどうぞ。
