スクールカーストといじめはどのような関係にあるのでしょうか。
スクールカーストはいじめの原因になっているのでしょうか。
結論から言うと、スクールカーストといじめは関係ありますが、ほとんど同じものです。
この記事では、スクールカーストといじめの関係性について解説します。
スクールカーストの定義

スクールカーストとは、以下のように定義されます。
学校で見られる上下関係の階層(カースト)構造
日本では「1軍・2軍・3軍」などのような名称で、クラスの中で序列を決めることが多いです。
スクールカーストの3つの定義
序列が決まっているだけではスクールカーストとは呼べません。
スクールカーストには以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 人気で序列が決められている
- グループ同士で決められている
- メンバーが固定されている
逆に言えば、上記の条件を満たしていない場合、スクールカーストとは呼べません。
クラスの中に身分があれば、即スクールカーストというわけでもないのです。
スクールカーストは曖昧
スクールカーストの基準は曖昧です。
年収、成績、実績などの目に見えてわかりやすいもので序列は決まりません。
早い話、「人気と思われているかどうか」で、スクールカーストの序列は決まります。
しかし、「人気」の基準はクラスの中でも曖昧で、決まったものではありません。
たとえ、容姿が良くても「調子に乗っている」などと言われれば、カースト上位にいられない可能性もあります。
いじめの定義

いじめとは以下のように定義されます。
児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。
基本的には、被害者目線で苦痛が感じられたかどうかがいじめになってきます。
いじめの定義は「いじめと思うかどうか」
いじめは、被害者が「いじめと認識するかどうか」で判定されます。
「一定の人間関係のある者から」というのは、日頃の強い立場の生徒、弱い立場の生徒は関係ないことを意味しています。
「心理的・物理的な攻撃」は、言葉や無視、暴力などの全般的な攻撃を指します。
「精神的な苦痛を感じている」というのが、被害者がいじめと認識するかどうかを指します。
このように、周囲や加害者がどう思おうと、被害者が「いじめ」と認識するかどうかがいじめの判断基準になることがわかります。
いじめの定義は変わってきた
いじめの定義が現在のものになるまで、いじめの定義は何度も変わってきました。
1986年度からのいじめの定義
まず、1986年度からのいじめの定義を確認していきましょう。
いじめとは、「①自分より弱い者に対して一方的に、②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、③相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認しているもの。」
文部科学省より
この場合、「自分より弱い者に対して」と「学校としてその事実を確認しているもの」が現在と違います。
昔の定義であれば、弱い者から強い者への攻撃は、いじめではありませんでした。
また、学校がその事実を確認していないものもいじめではありませんでした。
1994年度からのいじめの定義
次に1994年度からのいじめの定義を確認していきましょう。
いじめとは、「①自分より弱い者に対して一方的に、②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、③相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。」とする。なお、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと。」
文部科学省より
「学校が事実を認識している」という条件が削除されました。
さらに、いじめかどうかは、被害者の生徒に寄り添って判断すること、という項目が増えています。
この定義により、いじめと判定されるケースは増えたと言えるでしょう。
2006年度からのいじめの定義
2006年度からいじめの定義は、以下の通りです。
いじめとは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理
文部科学省より
的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」
「強い者から弱い者へ」という記述が消えました。
「いじめに当たるかどうか慎重に判断」は、「被害者が苦痛を感じていれば、いじめ」と判断される定義となりました。
2013年度からのいじめの定義
2013年度からのいじめの定義は、現在(2023年)のものになりました。
児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。
文部科学省より
いじめの定義は曖昧
いじめの定義とその変遷を確認しましたが、お分かりの通り、いじめの定義はかなり曖昧です。
以下はいじめの認知件数のグラフです。

「いじめは増えてきた」という論調をよく耳にします。
しかし、いじめの定義が変わった1994年と2006年に大幅にいじめの件数が増えています。
いじめの定義の変化により、これまで「いじめ」と認定されていなかったものがいじめに含まれているだけと言えるでしょう。
つまり、いじめの定義とは、曖昧なもので、「これはいじめか?」という議論はほとんど意味をなさないことがわかります。
私の勤めているところでも「いつも生徒を攻撃していることによって、無視され出したことがいじめだ!」と主張して、いじめとなるケースがありました。
いじめかどうかに関わらず、生徒みんなに寄り添うことが必要ですね。
スクールカーストの原因
スクールカーストの原因は以下の通りです。
- 閉鎖的な空間であること
- グループ間で行われること
- 他に指標がないこと
1つずつ解説していきます。
原因1:閉鎖的な空間であること

スクールカーストは閉鎖的な空間で行われます。
ほとんどメンバーが変わらない空間で、人間活動が営まれるときに、コミュニティの階層が固定化されます。
大人の世界では、転勤、異動、転職、出世などで、人間関係は変わっていきます。
しかし、学校ではずっと同じ空間で過ごす必要があるため、たまたまできたクラスの序列がずっと続くことになります。
原因2:グループ間で発生する

スクールカーストはグループ間で発生します。
生徒は平常時に価値観が同じ人同士でグループを作ることがあります。
ゲームや恋愛の話で盛り上がったりして、楽しく学校生活を送っています。
しかし、行事やイベントの時に多くの生徒がグループを越えて、コミュニケーションを取らなければならないときに、階層を意識し始めます。
自分のグループの優位性を証明したくなるのです。
原因3:他に指標がない
スクールカーストは「人気と思われているかどうか」で順位が決まります。
実際の人気は関係なく、クラスの生徒に、なんとなく人気と思われている生徒がカーストで上位に君臨します。
どうすれば、人気になるの?
人気になる方法に確実なものなんてないんだ!
スクールカーストで上位に行くための基準は、曖昧です。
例えば、
- 容姿
- 部活
- 恋愛
- コミュニケーション能力
など、要因は数多く考えられるものの、必ず上位になる方法はありません。
スクールカーストはそういった「なんとなく」で決まるものなのです。
いじめの原因
いじめの原因は以下の通りです。
- 閉鎖的な空間であること
- 4つの組織が関わっていること
それぞれ解説します。
原因1:閉鎖的な空間であること
いじめは閉鎖的な空間で行われます。
日本のいじめは、「教室内」で行われることが多いです。
考えてみれば、不思議ですが、圧倒的な強い者が弱い者をいじめるなら、高学年が低学年をいじめる方が起こりそうです。
なぜ、日本では教室内でいじめが頻発するのかというと、日本の学校は、同じ人間と同じ空間で同じ席で過ごさなければなりません。
そのため、自力で解決できない人間関係が固定化されていくことになります。
「逃げられない空間」がいじめを生むのです。
原因2:4つの組織が関わっている

いじめの研究では、「4つの集団」がいじめを構成しているという説が主流です。
いじめを作る4つの組織は以下の通りです。
- 被害者
- 加害者
- 観衆
- 傍観者
それぞれの登場人物が関わる過程は以下の通りです。
- 加害者が被害者を攻撃する
- 観衆がはやし立て、盛り上げる
- 傍観者が見て見ぬふりをする
被害者→加害者→観衆→傍観者という4層が重なり、いじめが成立します。
傍観者が仲裁者に変わった時にいじめはなくなるとも言われており、いじめ研究における定説となっています。
スクールカーストといじめは似ている
スクールカーストといじめはよく似ています。
以下はスクールカーストといじめの共通点です。
- 定義が曖昧
- 閉鎖的な空間で起こる
- グループ間で起こる
1つずつ解説していきます。
共通点1:定義が曖昧
スクールカーストといじめの定義は曖昧です。
それぞれの定義は以下の通りです。
スクールカーストの定義 | いじめの定義 |
---|---|
「人気」という曖昧な基準で生まれる | 被害者がいじめと認識すればいじめ |
スクールカーストで序列が発生する具体的な基準は存在しません。
いじめも、現在の定義では、「従来のいじめ」は数えられなくなっています。
スクールカーストもいじめも定義がはっきりとしているとは言えない点に共通点があります。
共通点2:閉鎖的な空間で起こる
スクールカーストといじめは閉鎖的な空間で起こります。
クラスという閉じられた空間にいることで、一度できた人間関係の序列は、長く続くことになり、スクールカーストが生まれます。
また閉じられた空間は、強者と弱者の関係をはっきりとさせ、強者の攻撃によっていじめが発生します。
スクールカーストもいじめも日本特有の同じ人間、同じクラス、同じ席という条件下で成立しやすい共通点があります。
共通点3:グループ間で起こる
スクールカーストもいじめも「グループ」が鍵となっています。
個人対個人でいざこざではスクールカーストやいじめに発展することはありません。
スクールカーストは、価値観をともにした集団同士によって発生します。
いじめも加害者と被害者だけではなく、その取り巻き集団によっていじめへと発展していきます。
スクールカーストといじめは教室を巻き込んだグループによって発生していると言えるでしょう。
スクールカーストはいじめの原因か?
スクールカーストがいじめを増やしているのかどうかについて解説していきます。
スクールカーストといじめの違い
スクールカーストといじめの違いはどこにあるのでしょうか。
いじめはスクールカーストよりも少し具体的です。
スクールカーストはクラスの「構造・序列」を表し、いじめは「言動・行動」を表します。
そのため、いじめの方が少しだけ動作をイメージしやすく、具体的です。
ただし、スクールカーストが原因でいじめに発展することはありますが、スクールカーストにおける「いじり」といじめの境界線は曖昧です。
スクールカーストはいじめの原因か?
スクールカーストがいじめの原因とも言えますが、スクールカースト自体がいじめとも言えます。
スクールカーストの底辺と呼ばれる生徒は学校生活を楽しく感じていません。
参考:【比較】スクールカーストの一軍・二軍・三軍の学校生活の違い3選
いじられたりすることも多くあり、場合によってはいじめと捉えられてもおかしくありません。
被害者が精神的苦痛を感じていれば、いじめと判定されるため、スクールカーストそのものがいじめと認識される可能性は高いでしょう。
スクールカーストはいじめの原因とも言えますが、スクールカースト自体がいじめとも言えます。
そもそも両方とも定義が曖昧であるため、スクールカーストかいじめかを判断することに大した意味がないことがわかります。
スクールカーストやいじめで悩んでいるなら
スクールカーストやいじめに悩んでいる人の対策にはどのようなものがあるでしょう。
いじめの解決策は相談

いじめの解決策は相談です。
もし、言葉や暴力で自分の権利が脅かされていると感じた時は、真っ先に大人に相談しましょう。
この時、最も信頼できる大人に相談するのが適切です。
我慢するところではありません。すぐに相談しましょう。
スクールカーストの場合は気にしない

スクールカーストの最善の解決策は気にしないことです。
スクールカーストは子どものときのみ気になってしまう幻のようなものです。
あると言えばあるが、ないと言えばないです。
もし、何か言われても思われても、気にしないことができるなら、それが一番の対策です。
スクールカーストの序列によって、自分の権利が侵害されそうなときは、こちらも迷わず相談しましょう。
参考:【対象別】スクールカーストで悩んでいる人の解決策や対策を紹介
まとめ
まとめましょう。この記事では以下のことを解説しました。
- スクールカーストといじめの定義は曖昧
- スクールカーストといじめの原因は共通している
- スクールカーストといじめの違いはそれほどない
- いじめで悩んでいるなら相談、スクールカーストは気にしない
スクールカーストが目に見えて、自分に害を与えていない場合は、気にせず自分の好きなことに注力しましょう!